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「終わりましたよ」
私、九隅四季は電話の相手に智子さんに告げた。
「これで、私のところにもう恵からのメッセージは届かないのね?」
「ええ、恵さんは成仏されたのでもうメッセージが届くことはありませんよ」
安堵のため息と数秒の間。言いづらそうに智子さんが質問してきた。
「恵は怒っていた?」
「いえ、智子さんには特に何も」
「そう……」
また、数秒の間。
「私の事を最低な人間だと思っているのでしょう?」
「いえ、そんなことは」
「嘘はつかなくていいよ。だって私が嘘を吐いたから恵は自殺したんだから。幸二が私の事を好きだったなんて嘘をついたから」
「嘘は言っていません」
「でも、仕方なかったじゃない。私は悪くないよ。だって、幸二の本当の良さを優しさを知っていたのは私だけだったのに。私だけでよかったのに。ずっと好きだったのに。それなのに。恵は突然現れて私の前から幸二を奪っていった」
私は小さくため息を吐く。
「でも、あなたは一度幸二さんとお付き合いをしているんでしょう?」
「幸二は。私のことを分かってない。あんなの、付き合っているうちに入らないよ。もう少し、ほんの少し時間があれば、私の事を好きになってくれたのに!」
「あなたが本当にそう思うなら可能性があったんじゃないですか」
「あの時だってそう。幸二を呼び出して道路の真ん中に飛び出した。幸二は私を助けに飛び込んできてくれた。だから私は幸二と一緒に死のうとしたのに。腕をつかんでまで車にはねられたのに。なんで、私だけ生き残っちゃうのよ」
私は何も言えない。
「ねえ。私が悪いの? 私の好きなものが他人のものになるなんて耐えられない。そんなの誰でも持っている感情でしょ? 私は悪くないよね? ね? だって恵だって怒ってなかったんでしょ? だから、私は悪くないよね?」
何度も繰り返される質問に私は端的に答えた。
「それは自分で決めてください」
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