第1章

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「終わりましたよ」  私、九隅四季は電話の相手に智子さんに告げた。 「これで、私のところにもう恵からのメッセージは届かないのね?」 「ええ、恵さんは成仏されたのでもうメッセージが届くことはありませんよ」  安堵のため息と数秒の間。言いづらそうに智子さんが質問してきた。 「恵は怒っていた?」 「いえ、智子さんには特に何も」 「そう……」  また、数秒の間。 「私の事を最低な人間だと思っているのでしょう?」 「いえ、そんなことは」 「嘘はつかなくていいよ。だって私が嘘を吐いたから恵は自殺したんだから。幸二が私の事を好きだったなんて嘘をついたから」 「嘘は言っていません」 「でも、仕方なかったじゃない。私は悪くないよ。だって、幸二の本当の良さを優しさを知っていたのは私だけだったのに。私だけでよかったのに。ずっと好きだったのに。それなのに。恵は突然現れて私の前から幸二を奪っていった」  私は小さくため息を吐く。 「でも、あなたは一度幸二さんとお付き合いをしているんでしょう?」 「幸二は。私のことを分かってない。あんなの、付き合っているうちに入らないよ。もう少し、ほんの少し時間があれば、私の事を好きになってくれたのに!」 「あなたが本当にそう思うなら可能性があったんじゃないですか」 「あの時だってそう。幸二を呼び出して道路の真ん中に飛び出した。幸二は私を助けに飛び込んできてくれた。だから私は幸二と一緒に死のうとしたのに。腕をつかんでまで車にはねられたのに。なんで、私だけ生き残っちゃうのよ」  私は何も言えない。 「ねえ。私が悪いの? 私の好きなものが他人のものになるなんて耐えられない。そんなの誰でも持っている感情でしょ? 私は悪くないよね? ね? だって恵だって怒ってなかったんでしょ? だから、私は悪くないよね?」  何度も繰り返される質問に私は端的に答えた。 「それは自分で決めてください」
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