第1章

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「ごめん。私からアドバイスできることは一つだけだよ。恵よく聞いて。生方駅って言うのは今、恵が乗っている電車の路線にできた新しい駅だよ」  そのメッセージを読んだ瞬間携帯のバッテリーが切れた。 「え? なんで? 充電は充分にあったじゃん!」  私は叫んで何度も携帯を振り回す。しかし、画面が再起動することはなかった。 「どうなってんの?」  それに、最後に読んだ智子のメッセージもよく分からなかった。生方駅が一年前にできた? 私は一年もこの駅の存在に気が付かなかったのだろうか? 毎日乗っているのに? そんなことありえない。智子こそ私を怖がらせようとからかっているに違いない。  ガタンと電車が揺れて停車した。窓の外を見ると「生方駅」となっている。前駅と次駅の名前も看板に書かれていたがどちらも見覚えがない。 「降りた方がいいのかな?」  いやでも、知らない場所に一人でどうしろというのだ。降りるのは怖い。でも、このまま乗っているのも怖い。ドアの前で躊躇していると「ドア閉まりまーす」と気の抜けた声が聞こえて扉は閉まってしまった。私は仕方がなく座席に戻って力なく座る。ふと視線を上げるといつの間にか正面の席に少女が座っていた。線の細い体に緩くウェーブの掛かった髪。何より目立つのはその髪の毛がすべて白かったことだ。顔は女の私から見てもかわいい顔をしていた。だからこそ怖かった。そもそもこんな終電の時間にどうみても高校生ぐらいにしか見えない白髪の女の子が知らない駅から乗ってくるなんてもう怪談でしかない。この子は本当は幽霊とかじゃないでしょうね? そんな自分で考えてしまった疑問で背筋が寒くなる。そもそも幽霊なんて非科学的なものは私は信じていない。 「あの……」  私が彼女を凝視していると、彼女がおずおずと手を挙げて私話しかけてくる。 「え? 私?」  私は自分を指さして驚く。しかし、この車両には他に誰も乗っていないのだから当たり前だった。女の子も首を縦に振って肯定する。 「何か用?」 「いえ、むしろ私が聞きたいんです。さっきから私をずっと見ているから何か用事でもあるのかなと思ったんです」 「ああ、ごめんなさい」  確かに不躾に見つめていた。 「こんな時間に若い子が乗ってくるのが珍しくて」 「ちょっと、私はこの電車で待ち合わせしてまして」 「そうなんだ」 「お姉さんは今帰りですか?」
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