第1章

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 それは本当なのか嘘なのか。それはもう私にはどうでもよかった。私が嘘を吐かないでと言って、幸二は本当の事を言うと約束した。ならば、幸二のこの言葉は真実なのだろう。私と幸二にとって真実ならそれでいい。私は四季に向き直って頭を下げた。 「ありがとう四季。幸二に合わせてくれて」  四季は首を横に振る。 「私はちょっとお手伝いをしただけです。もともと恵さんには見る素養があったということです」 「そっか」 「何か、他に何かしてほしいことはありますか?」  四季の質問に私は首を横に振る。そこでふと、思い出したことがあった。ほんの小さな事。 「ああ。そっか。そういうことか。だから、私は電車に乗っていたんだね」  四季が悲しそうな顔をする。 「そんな顔をしないでよ。四季が悪いわけじゃないんでしょ。むしろこの為に来たんだよね四季は」 「ええ。そうですね」 「そっかー。私って意外と繊細だったんだなー」  心底意外な気持ちだった。 「恵はちょっと強がる癖があるからね」 「じゃあ、そこは幸二がフォローしてよ」  また、幸二が困ったような顔をした。少しぐらい困ればいい。 「酷な質問かもしれませんが一つ、確認させてください。恵さんは思い出したか?」  私はうなずく。 「ええ。思い出した。私は電車に飛び込んで自殺をしたんだね」  私の答えに四季はうなずく。 「私は自分が死んだことに気が付かずにずっと電車に乗ってたんだね。幽霊になって」 「そうです。私はそれをあなたに気付かせる為にこの電車に乗ったんです」 「私が死んだのはいつ?」 「一年半前ですね」 「ああ。どおりで最近できた生方駅を知らないはずだ」  妙に納得した。 「で、これから私はどうすればいいのかな?」 「自分が死んでいることを自覚した恵さんは自動的に成仏すると思います。幸二さんと一緒に」 「もしかして、私を待っていてくれたの?」  幸二を見ると幸二は小さくうなずいた。私の事を心配してくれていたのだろう。 「一人で行けるわけないじゃないか。僕は恵といつも一緒に居るし、恵はいつもでも僕のところに帰ってきていいんだよ」 「そっか。じゃあ、待たせてごめんね。ただいま。幸二」 「ああ。おかえり」  私はちょっと照れくさいと思いながらも差し出された幸二の手を握る。視界が白く染まっていく。でも、目の前に私に笑いかけてくれる幸二の顔を見ていると何も不安を感じなかった。 * * *
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