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「幽体離脱だよ、アンダンテ。きみは今、魂だけの存在となって、私と話しているんだ」
「そんな。じゃあ、わたし死んじゃったんですか?」
「いいや。おそらく一過性のものだ。きっと転んだ拍子に頭を打って、魂だけ抜けだしたんだろう。きみはよくも悪くもドジだし」
「えへへ。それほどでも」
「ほめてない。とにかく早く体に帰るんだ。目を閉じてリラックスすれば、自然ともとに戻るはず……」
アンダンテは命じられたとおりにした。すると、体がふわりと浮き、もう一人のアンダンテに吸いこまれていく。
そのようすに彼は安堵の表情を浮かべ、微笑んだ。
「ううん」
目を覚ましたアンダンテは身を起こし、自分の体をペタペタとさわり、次に近くの手鏡を覗いた。どこか抜けた感じのする丸顔の、メイド服を着た少女がいる。紛れもなく自分だ。
意識がはっきりするにつれ、おでこが痛みだす。見ると、少し赤くなっていた。同時に記憶もよみがえる。洗濯ものをとりこんで運んでいる最中に落ちたタオルを踏んづけ、転んだのだった。やはりドジな顛末にアンダンテは一人苦笑を漏らす。
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