122人が本棚に入れています
本棚に追加
* 深夜1:00 *
私はそこで呆然と立ち尽くしながら、初めて洋子さんに会った時の事を思い出していた。
それほど古い付き合いではなかった。初めて会ったのがお盆の終わり際だから、およそ二、三か月ていどの仲だ。私が連休を使っての里帰りから戻ってくると、アパートの部屋の前でバツの悪そうな翔太と一緒に待っていたのだ。
ああ。翔太のオンナか。私は一目見て無感動にそう思ったのを覚えている。
一応、私は翔太のカノジョだ。だから、本来ならもう少し取り乱すのが当たり前なのかもしれなかったが、残念ながら私は翔太の節操というものを全く信用していなかった。
「どちら様ですか?」
超冷静に私は聞いた。
ブランド物と思しきスーツに身を包んだ、明らかに年上なその女の人は、感情的な視線を私に向けた。
「あんたこそ、誰よ」
私の家で待っていて、誰だもなにもあったものではない。さすがにその返しは想定していなかったので、思わず視線が翔太の方へ泳いだ。
翔太は全くこっちを見ようとしない。あからさまに私と洋子さんとのやり取りにそっぽを向いている。
「えーっと……沢沼、美咲です……」
仕方がないので自己紹介すると、
「そうじゃなくて!」
何故かヒステリックに叫ばれた。ハイヒールのかかとがカツンと一回鳴る。
「じゃあ、何なんですか。人ん家に勝手に押しかけておいて」
さすがに少しイラッとして私は言い返した。私は実家帰りなのだ。ちょっとそこのコンビニまで行って来たわけではない。早く家に入って休みたいのが本音だった。
最初のコメントを投稿しよう!