壱、平成二十六年

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   * 深夜1:00 *  私はそこで呆然と立ち尽くしながら、初めて洋子さんに会った時の事を思い出していた。  それほど古い付き合いではなかった。初めて会ったのがお盆の終わり際だから、およそ二、三か月ていどの仲だ。私が連休を使っての里帰りから戻ってくると、アパートの部屋の前でバツの悪そうな翔太と一緒に待っていたのだ。  ああ。翔太のオンナか。私は一目見て無感動にそう思ったのを覚えている。  一応、私は翔太のカノジョだ。だから、本来ならもう少し取り乱すのが当たり前なのかもしれなかったが、残念ながら私は翔太の節操というものを全く信用していなかった。 「どちら様ですか?」  超冷静に私は聞いた。  ブランド物と思しきスーツに身を包んだ、明らかに年上なその女の人は、感情的な視線を私に向けた。 「あんたこそ、誰よ」  私の家で待っていて、誰だもなにもあったものではない。さすがにその返しは想定していなかったので、思わず視線が翔太の方へ泳いだ。  翔太は全くこっちを見ようとしない。あからさまに私と洋子さんとのやり取りにそっぽを向いている。 「えーっと……沢沼、美咲です……」  仕方がないので自己紹介すると、 「そうじゃなくて!」  何故かヒステリックに叫ばれた。ハイヒールのかかとがカツンと一回鳴る。 「じゃあ、何なんですか。人ん家に勝手に押しかけておいて」  さすがに少しイラッとして私は言い返した。私は実家帰りなのだ。ちょっとそこのコンビニまで行って来たわけではない。早く家に入って休みたいのが本音だった。
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