第19章 よかったね、ありがとう

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父に酸素マスクをつけても、呼吸は変わりませんでした。顎を回転させるような、無理矢理口を開いているような、そんな感じでした。 ずっと父の隣で手を握っていた母が、異変に気が付きました。 「ねぇ、お父さんの口の奥に、何か白いものがあって、息する度にうごいてるんだけど、何だろ?」 母に言われて父の口をのぞき込みました。確かに小さな白いのが見えます。 通りかかったナースを呼び止めて、父の口を確認してもらいました。すると 「あぁ・・・お昼のお薬ですね。」 そういってピンセットを持参し、マスクを外してひょいと取り上げました。 お昼の・・・薬? 父は朝からあのイビキをかいていたと言っていたはず。お昼なんて食べてないはず。 寝ている父の口に、薬を放り込んだ・・・? は? もう、私は悔しくてたまりませんでした。 寝ている病人が薬なんて飲めるわけがない。 この病院最悪だ! お母さんだけは絶対ここに入れてはいけない! そう思いました。
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