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季節は夏だ。ヴィーヴィーと五月蝿い繁殖虫の鳴き声を聞き流しながら、俺はコンクリートで塗り固められた道を歩いた。
俺は今年で32になるしがない工場の派遣社員だった。彼女ナシ、趣味ナシのもっぱら典型的な一人暮らし男だ。給料は月に手取りで20万程度……まあ、この派遣処分時代に首を切られていないだけマシである。
30代に突入してからは時々現状に対して泣いたりもしたが、……そんな気分にすらなる事はもう無かった。むしろ心地良かった。何も考えず、ロボットの様に無心で働いては帰宅の無限ループ。それは20代の時に想像していた夢や希望といったモノに惑わされず、ただただ虚無が1日を満たすだけの日々は疲れる事が無かった。
――さて、お気づきだろうか?笑ってくれ、その方が楽だ。上記の文が全て過去形であることに……。
俺はそんな内容のレスをキーボードを叩いてスレッドに書きこむ。すると、同情から誹謗中傷など様々な内容の返信が返ってくる。俺はそれを見ては舌打ちし、新たに幾つかの書き込みに悪意を持った返信を送る。
……そう、俺は無職となっていた。小さな6畳間のワンルームはゴミが散らかり、自分の手元にはポテトチップスがある。典型的ニート、社会的癌、この奴隷社会にとっての勇者だ。……笑えない。
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