天狐の変化(へんげ)

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「人間の姿に変化して社を訪れる人の様子を見ているだけではつまらぬな。たまには人間の様に夏を味わってみたいものじゃ」 「じゃあこれ食えば」 「いっ何時からそこに! いや、そもそもお主、我が見えるのか」 「さっきからいたけど。あと普通にあんたが見えるし」 「はじめてじゃ、そのような者は。何者なのだ」 「どこにでもいる男子高生だぜ。てか早く食わないと溶けるぞ」 「んっいひなり、くひにいれるれない(いきなり、口にいれるでない)」 「垂れそうだったし」 「……! なんと、美味じゃな」 「だろ? それはソーダ味のアイス。俺はこれがなきゃ夏を実感できない」 「人間はかような食べ物で夏を味わうのか。悪くないな。こんなに愉快なのは久々じゃ」 「やっと笑った。ずっと独りで寂しそうだったからさ。あんた、笑った方がいい顔だ」 「なっ、別に良い顔でなくとも構わぬ」 「もったいないなー。俺はあんたの笑顔、好きだぜ」
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