オカエリとタダイマの小さな事件簿

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 私はオカエリ、本名は岡?ア恵莉子。オカルトエリコと呼ばれる事もある。私の前、大股で二歩先の位置で、細長いのに二時間前から大量の脂汗をかく、落ち着かない脊髄踊りを続ける男子は助手のタダイマ、本名は今井正(イマイタダシ)学年は一つ上。  今私達は旧校舎の、正確に言えば旧校舎に似た別の世界の旧校舎にいる。  なぜここに来てしまったのかと言うと、それは私のせいになる。私のオカルト漬けな脳細胞とその血筋が、この状態を描くに至る潜在的な要因である。と言うことは重々承知している。でもそれは、防ぎようのない不可抗力であって生きて行くために必要な事。  仕事の依頼を受けたからには、それを達成しなければならない。  依頼は、あくまで調査と言うことで、旧校舎で消えた能力者達の手がかりを探してほしいというもの。自称、本物は問わず、何らかの特別な力がある人々が、重要文化財文化財としても心霊スポットとしても知られる旧校舎に行ったきり消息不明となる事案が度々起きている。直接の依頼は、怪談芸人の所属する大手芸能事務所からだった。  高校生といえど、プロはプロ。引き受けたからには、調査でも完璧にこなさなければならない。きっちりとした準備をして、結論に至るデータも揃えたかった。でも不運にも、この状態、私に責任がある。とは思っているが、やっぱり、九割九分九厘九毛九糸以上、タダイマの責任と言いたい。  彼が頼りにならないのは分かっているが、今回は予想の五次元先を行く失態を犯した。あれだけ気を付けろ、細心の注意を払えと、分かりやすい指示を出したのにも関わらず。いかにもな怪しさを放つ鏡を、まるで純真無垢な少年のように無防備に触れて、その結果こちらの旧校舎に引きずり込まれた。
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