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「ここで一息いれるか」
夏の熱気は昔に比べ、年々強くなっている。
境内の日陰も根負けしたのか、緩やかな熱気を発していた。
「うえぇ、身体が溶けるぅ……」
意識が飛びそうな彼女と共に、社の前へ座り。
「ほら、これ食べとけよ」
弱る口元へ差し出すと、嫌そうな顔。
「えぇ~、これ美味しくないんだよねぇ。味ないし」
不満そうな彼女。
緊張感が薄いその姿に、妖力の塊を口から取り込みながら言う。
「溜めておけよ。ホントに溶けて、街中でバレたらマズイ」
暑さで溶けるというが、姿も容易に解ける。
そうなったら、人の姿でない俺達は、容易に狙われることになる。
「はぁ。見た目はこんなに綺麗なのに。せめてアイスみたいに、冷たくて美味しくならないのかな?」
……彼女を見ていると、そんなのんきさに呆れるため息と、彼女を守らなければという使命感、その両方が湧いてくる。
幼なじみのお姫様にも、困ったものだ。
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