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「・・・・・・・俺も彼女が好きだったんだ」
「な!・・・・・・何っ!!」
「・・・・・・・・え?」
突然のカミングアウトに俺と彼女は驚きの声を漏らすしかなかった。
「君と彼女がベランダから戻ってきて『付き合う事になった』なんて言った時は、さすがに僕も動揺したよ。」
「だから四人が空気を読んで帰った時、『俺はちょっと邪魔してやろう』なんて思っちゃったんだ。」
「だって、嫌だろう。好きな子が友達に抱かれるのを黙って見過ごすだなんて。」
「僕は醜い人間だなあ・・・・告白しなかった僕が悪いって言うのに・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
悲痛を噛み砕いた様な顔をしてそう呟く友人の言葉を、俺は黙って聞く事しか出来なかった。
俺も、、なんて醜い人間なのだろう。
友人を帰らせるために回りくどい手を使って。訳のわからない作戦を立てたのも、どこかアイツは気付いて空気を読んで帰ってくれるという甘えからだったのだろう。
『済まない』『ごめん』
この一言が出てこない。
この張り詰めた沈黙の所為だろうか?
自分の心の矮小さの所為だろうか?
この凍てつく様な沈黙を、掠れた声で破ったのは、意外にも彼女の一言だった。
「・・・・・・・殴り合いをして下さい」
◇
今、俺はアパートから一番近い公園の真ん中に立っていた。
外は十二月の下旬なので肌を突き刺す様な痛みが走っているので、思わず身震いしてしまう。
目の前には、同じ様に寒さに堪えようと体を摩る友人が立っていた。
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