不毛な争い

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ここはこのアパートの一室の主として、君には帰って貰いたいと言うべきなのだろう、しかし彼一人を帰らせるとはどう言う事だろう、申し訳無い気持ちになるのだ。 俺が、いや俺と彼女がいかがわしい行為で快楽を貪る前に、心残りがある事はどうしても避けたい。 そしてそもそも、自然な形でこの男には帰って貰わなければいけないのだ。 この空間においてこの聖夜の夜に邪な感情を持っているのは俺だけであり、彼女が俺とクリスマスイブの夜をサンタそっちのけで過ごしたい訳では無いのである。 つまりは、俺の淫猥な感情を悟られる事なくこの男を自然に先に帰らせないければならないのだ。 どうにかして互いに穏便に、そして快く、彼を帰路に着かせなければならないのだ。 しばらくの思慮の末、俺は『作戦』を立てる事にしたのだった。 ◇ 作戦その一 「明石家サンタ、見たくないか?作戦」である。 空気を読まないこの男。確か今は彼女が居ない筈である。 というかコイツに彼女が居た時期は無かったはず。つまりコイツは20年近く彼女のいない惨めなクリスマスイブを送っている筈なのだ。 だとしたら、あの番組「明石家サンタ プレゼントショー」も見ているに違いないのだ。 しかし時計はもう丁度、零時を刺そうとしている。これでは早く帰らないとこの番組の開始に間に合わなくなってしまう。 そして可愛らしい俺の彼女は、そんなクリスマスイブの深夜なんていうニートタイムにやっている番組を見ている訳が無い。 そして都合の良い事に俺のアパートのテレビは今偶然壊れて使い物にならない、既に条件は揃っている、後は目の前の敵を「明石家サンタ」という餌で釣り自宅まで追い込めば良いのだ。 俺は空気の読める四人が帰った後、少し静かになっていた二人に話題を振る。 「みんなで飲んでたら、結構遅い時間になっちまったな」 「うわ!もうこんな時間になっちゃったじゃんイブ終わっちゃうじゃん!」 俺の彼女が楽しそうに言葉を返した後に友人が感慨深そうに 「いや~人が減ると寂しいものだよね。急に人が減った感じになってさ」 と返す。
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