12人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
俺はお前が減ってくれると嬉しいのだが、
とは口には出せないので作戦通り
「俺の家さ、テレビ今壊れてんだよね」
と、話題を出してみる。
、、、少々唐突だったろうか?
まあいい。脈絡のない会話なんて、今時の若者にはザラにある事だろう。
「え?あの実家から持ってきたって言ってた奴壊れちゃったのか?」
嬉しい事に、友人が話に食いついてきた。これで少しはやり易くなった。
「まあ、でも今時ってネットあるからあんま困んないでしょ?」
彼女も会話に参加した事によって自然な状況に持ち込む事が出来た。中々に幸先が良いだろう。
「まあ、スマホあれば大体なんとかなるしね。別にそんなに困って無いんだけど、でも好きな番組とかがあると見たくなっちゃうよね」
よし、完璧だ。ここで「明石家サンタ」の話に持ち込もう
「そうそう、好きな番組と言えばあれ」
「うーん、なんだったけなぁ?」
「ああ!そうだあれじゃないか!そろそろ始まるじゃないぞー!あのクリスマスのご長寿番組である『明石家サンタのプレゼントショー』が、俺の家にはテレビは無いから帰らないと番組に間に合わないじゃないか!急いで自宅に戻らないと!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
沈黙かよ。
ちょっとオーバーにやり過ぎたな。これ完全に帰れって言ってる感じになってんじゃねーか。
土壇場で緊張して良くわかんない事するって良くあるんだよな
ていうかこんなんで良くさっき告白成功したな
俺なんて言ったんだっけ?
どう言い訳しようかこの空気。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
なんか喋ってよ。
うわぁーやらかしたー
俺が帰りてえよ
さんま見てえよ
「お前、そんなにあの番組が見たかったのか?」
「・・・え?」
「俺の家来て一緒に見るか?四原色の高画質だぞ」
「・・・・・・いや、結構です。すみません」
「私のケータイ、テレビついてるけど見る?」
「いや、大丈夫です」
どうやらおめでたい事に、二人とも俺がこの番組がただ好きなだけであると勘違いをしてくれたらしい。助かった。
いや、全然助かってはいないんだが、まだ友人帰ってないし。
最初のコメントを投稿しよう!