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前置きが長くなったが作戦に移ろう。
「もうこんな時間だし、電車なくなっちまうからお開きにしよっか」
俺が自然にパーティの閉幕を告げる。
すると彼女は不満そうに
「うーん。まだ飲み足りないけどしょうがないっか」
と言うもんだから、俺は心の中で(飲み足りないって?大丈夫。これから君はもっと濃くて良いものを飲むんだよ)おかしな気持ちになって自然と笑みがこぼれたのだ。
「しょうがないか~じゃあ帰ろっか」
すると友人が遂に「帰る」の一言を言ったのだ。
この言葉を聞くのにどれだけの努力を積み重ねたのだろうか?
思わず涙が溢れそうになるのを堪えて作戦通りスマホを見て驚いた表情を作る。
「大変だ!この辺に変態が出たらしい」
「・・・・・・・え?」
彼女がキョトンとした顔で疑問を漏らす。
「今、ネットニュースで回ってきたんだ。この近くを逃亡してるって!今女性が外に出るのはかなり危険かも知れない。」
「いや、男の俺も危ないと思うんだけど、」
ぶっ飛ばすぞ
「男には興味ない変態らしい。」
「何で、そんな事わかってるんだよ!なんで変態の性癖が完璧に分かってるんだよ!」
友人がこれでもかと言う程に食い下がる。
「いや、でも変態って言ったって駅まで行くだけだし大丈夫でしょ。それに遭遇したってコイツと駅まで一緒だし、大丈夫でしょ」
彼女が余裕そうな表情でそう言って帰りの支度を始めてしまう。
「いや、ダメなんだ。情報ではソイツは拳銃を所持しているらしい」
「だったら俺も外でない方が良いじゃないか!」
「大丈夫だ。奴は男には興味ない!」
「なんでそんな風に変態の性癖を決めつけるんだよ!興味あるかも知れないだろ。男に!」
「大丈夫だ。そんな事は断じてあり得ない!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
俺と友人のこの意味不明な不毛な言い合いを彼女はキョトンとした顔で見ていた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
長い沈黙の末、この静寂を破ったのは友人の声だった。
「君はもしかして、、僕に帰って欲しいんじゃないか?」
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