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「そこのイキな兄さん」
俺は不意に呼び止められた。生きてる奴は俺に気付くことはないだろうから、きっと"こちらの世界"の奴だ。
振り向くと、そこには。
ヘンテコな帽子を小粋に被り、クッソダサイTシャツを着込み、ズボンはズタボロなジーンズというある意味特殊な格好をした奴が、俺を見上げていた。
背は小さいが、歳は同じくらいか。
ちなみに俺は18才である。
「やあやあお兄さん!君、困ってるのかな?」
なんと。幽霊でも勧誘とやらは受けるのか……?
「お前の職業は何だ?」
俺は心底胡散臭そうな顔をして、変人野郎を睨み付けた。しかしそいつはニヤリ、と気味悪く笑って
「僕は道逝く人の悩みを解決しております」
「そうか。そいつは使えそうだが生憎、俺の悩みはお前には解決できん」
「まぁまぁそう言わずに。ちなみに僕はこの職についてから早60年ですよ?今更解決できない悩みなんてあるもんですか!」
変人はガッハッハッと豪快に笑う。
「お前はいつ死んだのだ」
「えー?語るほどのことじゃないですよー?18才の時に鉄骨が落ちてきて、その下敷きになってグッチャグチャー。それ以来時が止まっちゃってて、今もこんな容姿ですけど、これでも実年齢は78歳なんですよねー!」
何とも快活で元気な78歳だ。
と、
「龍之介さぁーん!」
こちらに向かって猛ダッシュしてくる人影。
そいつに変人は手をふりかえした。
「やぁ凱也くん!ずいぶんと遅かったじゃないか!」
ガイヤ……と呼ばれた少年……歳は15歳くらいだろうか。
真っ白な髪に色白な頬、瞳は淡いブルー。
……外人か?
「あ、今凱也くんのこと外人かって思ったでしょ?最初は誰だって思うよねぇ。僕も思ったもん。でも、凱也くんは正真正銘の日本人だよ!」
凱也はビシッと敬礼して、
「僕は日向凱也ですっ !龍之介さんの助手という世界で一番の栄誉をいただいている者ですっ!生きていたら今は20歳です。あの……よろしくお願いします?」
なぜ最後にクエスチョンマークを付けた。
「さっきから言っている龍之介、というのは……?」
「ああ」
俺の問いに、変人はふ、と笑った。その瞳は、すべてを見通しているかのように透き通っていて、ゾクリと背中に何かが走る。
「申し遅れましたね、龍之介というのは僕の名前です。遠藤龍之介……これが僕の名前です」
遠藤は、相変わらず笑みを崩さずに言った。
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