「だからカーミラは旅に出た」

18/19
6026人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「いい加減離れんか。貴様がどうしようと、私には何の関係もない。」 カーミラを引き剥がしながらも、ふっと逸らされた視線が本心を語る。 だから。 「オズって呼ばれるのが嫌なら、次に会ったときはミハイって呼んであげる。」 「は?」 「他の連中は適当かファーストネームでしょ。でも、おじさまのことは、私、ちゃんと『バサラブおじさま』って呼ぶわ。長であるおじさまのことを心から尊敬し崇拝しているからよ、これでも。」 どんなに生意気な軽口を叩いていても、カーミラにとって長は尊敬すべき一族の族長であり自分より遥かに強大で偉大な存在であると認識している。 だから、気軽にファーストネームでは呼ばない。 それが、彼女が自分で決めたルールの一つだ。 「だから、あんたのことも、次に会ったときには『オズ』でも『オズワルド』でもなく『ミハイ』って呼んであげるわ、次期族長。ただし、ちょっとは成長しているのよ。いいわね?」 にやりと笑うと、カーミラは顔をしかめているオズワルドの額にデコピンを見舞った。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!