「だからバサラブは旅に出た」

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「偉大なる長。そのような不届きな者が万が一にでも出ますれば、まず忠実な私めが始末をいたしまする。」 本来であれば、一番に長の地位を手に入れたいであろう上位吸血鬼にして、かつての継承権第一位。 ミハイさえ現れなければ、問題なく継承できたと考えているだろう。 その吸血鬼に、バサラブは留守を任せると命じた。 これは、ある意味、強烈な先制攻撃だ。 奪えるものなら奪ってみよ、と。 そのときは、全力で貴様を叩き潰す、と。 1000年経っても微塵も長の力が衰えている気配はなく、反逆はあまりに無謀だということは、その場にいる上位吸血鬼であれば誰もが感じた。 長が留守だからと迂闊に出ようものなら。 後悔をする間もなく、この世から消滅することになるだろう。 長は、それを躊躇わない。
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