「だからミハイは旅に出た」

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むろん、そんなことを気にするミハイではない。 この城の中、一族の中で、自分より強い魔力をもっているのはバサラブだけであるし、肉体の強靭さという点からみても、彼に敵うものはやはり長しかいなかった。 比較的年若い自分が、力こそ絶対至上主義のこの一族の中で次期族長と呼ばれることに、何の疑問もない。 他の吸血鬼なんぞ、歯牙にもかからない。 ごくたまに、数年に一度くらいの割合で闇討ちのような卑劣な襲われ方をしても、相手にならないほどの力の差を見せつけるだけだ。 あの手この手でミハイの失脚を狙ってくるものばかりだが、彼はまったく動じない。 しょせん、小手先ばかりの稚拙な罠だの濡れ衣だの、どれほどかけられてもどうということもないし、なにしろここはバサラブの力で維持されている、いわば長の魔力の中の閉じられた世界だ。 どのような小細工も、長には軽々と見透かされてしまうから、ミハイが不当に継承権を剥奪されることもない。 しかし。
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