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心の声がポロっと小声で出てしまった。
誰も聞いてなかっただろうと思った。…が。
…なんか、視線を感じる。しかも刺すような。
顔を上げると、私を睨みつけている白木氏と目が合った。
『へ…へへッ』と、取り敢えず笑って誤魔化そうとすると、白木氏はそんな私を完全に無視して、流山先生に笑顔を向けた。
「すみませんが、1分程お待ち頂けますか?」
白木氏は流山先生にそう言うと、レジ下から紙袋を取り出し、それを持ってキッチンに行ってしまった。
本当に1分くらいで白木氏はレジに戻って来た。
「お待たせしてすみません。今回だけ特別に。やっぱり私もどうしても召し上がって頂きたいので」
白木氏がさっきの紙袋を流山先生に差し出した。
流山先生と一緒に紙袋の中を覗くと、陶器の容器に入ったティラミスとハバロアが入っていた。
うわー。可愛い 美味しそう。
「ワガママを言って申し訳ありません。でも、嬉しいです。ありがとうございます」
『あぁ、早く帰って食べたい』と流山先生が子どもみたいに喜んだ。
未だ嘗て、私はこんなにも可愛らしい大人を見た事があっただろうか?
流山先生は私よりずっと年上だけど、流山先生が微笑ましくて仕方がない。
今度こそ会計を済ませて店を出ようとした時、
「あ、篠崎様!!」
白木氏が私を呼び止めた。
忘れ物でもしたかな? 私。
「ハイ?」
振り向いた私の二の腕を引き寄せて、白木氏が耳うちをした。
「容器、ちゃんと洗って返せよな、ブス。」
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