裏道レストラン

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 翌日も雨。  『2、3日考える』などと言いながら、シゴトが無くなる事が怖かったワタシは、昨日寝ずに原作を読み耽り、登場人物のイメージを絵に起こした。  早速それを編集部に持って行くことに。  靴を履いて傘を手に取る。  昨日の傘もついでに返しに行こう。  昨日描いた絵を濡らさぬ様胸に抱きかかえ、傘を2本持ちながら玄関を出た。  「絵はキレイなんですけどねぇ…今回の主人公の年齢は『35歳』なんですよ。ちょっと裸の肉質が若過ぎる」  編集部にて、昨日の力作を担当に見せた途端のダメ出し。  そんな事を言われても、私は今まで学生や20代しか登場しない漫画ばかりを描いていた。  35歳を描いた事がなければ、裸体を描くのも初めて。  「もう少し弛ませた方がいいですか?」  「35歳をバカにしてんの? そうじゃなくて、こういう弾ける肉質じゃなくて、もっと『しっとり』させてほしいの」  担当の35歳(雄)が35歳(雌)の肌質を語る。  確か、コイツの嫁は私より年下。  さてはコイツ、同級生と不倫してやがるな。  勝手な憶測で担当に白い目を向けていると、  「描き直して近日中に持って来て」  その不倫男(多分)に、昨日の努力の結晶をアッサリ突き返された。  不倫してろ!! そして、嫁にバレろ!! ちょっとは、私の頑張りを褒めろや、クソが!!  全く寝てないので、むやみにイラつく。  35歳の肉質。しっとりねぇ…。
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