海の藻屑

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 三十分後。  二人は雄大な海を見つめる。 「風が気持ちいいな」 「うん、清々しいね」  暫く立ち尽くしていると、何かを思い出した様に千尋が口を開いた。 「そう言えば最近、海が出てくるドラマを見たわ」 「海が出てくる? ……どんなドラマ?」  波風に髪をなびかせながら千尋は思い出す。 「ちょっとしか見てないから、詳しい内容は分からないの。でも確か……」 「確か? 何か覚えてるの?」  暇つぶしの会話になるかも知れないと、誠司は興味も無いのに追求し続けた。 「海を舞台にヤクザがこう言っていたわ。……借金が返せないなら、海に沈めるぞ! 海のモズクになりたいのか!? ……ってね」  ……  ……  海の……モズク?  誠司は考える。  そのドラマでギャグとして使われた言葉なのか? それとも千尋の天然が炸裂したのか? 単純に俺の聞き間違いか? 「海の……何だって?」 「海のモズクよ」 「海のモズクか……美味そうだな」 「えっ、何の事? 美味しいって?」  どうやら天然の方らしい。 「どうしたの、誠司?」 「何でもないよ」  何事にもやる気を見せない誠司は、千尋に真実を伝えなかった。
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