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いつの間にか夕方になり、二人は海を離れる。
すると空に黒い雲が広がり、突然雨が降り出した。
「あそこで雨宿りをしようぜ!」
誠司の掛け声に千尋は頷き、屋根のあるバス停へと駆け込む。
バケツをひっくり返した様な雨を、二人は呆然と立ち尽くしながら見続けた。
そして千尋が呟く。
「ゴリラゲイウね」
……
……
どういう意味だ?
ギャグなのか?
「何の事?」
「この雨の事よ。知らないの?」
千尋は真顔だ。
ゴリラってジャングルにいるあれか?
ゲイウ? 何だ、それは?
こんな間違え方が存在するのか? もう一度千尋の横顔を覗き込むが、やはり真顔だ。
「どうしたの、誠司?」
「……いや、何でもない」
やがて雨は止み、雲の切れ間に虹がかかる。
「虹よ……綺麗ね」
そう言ってあどけなく笑う千尋の横顔が可愛くて、誠司は真実を伝えなかった。
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