あの夏の囚われの身

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毎年夏になると、私は祖父母の家に預けられていた。 祖父母の家は避暑地にあり、周りには別荘が多くあった。 そんな別荘の中で私にとって一番目をひく家があった。 祖父の話では建てられたのは恐らく明治時代。 真っ白な洋館で、家のまわりを囲むように深紅の薔薇が咲いていた。 いつもは前を通り過ぎるだけ。 だけど、ある日のこと。 視線を感じて薔薇の隙間から家の中を覗いてみると、通りに面した部屋の出窓のところに立っている男性がこちらをじっと見ていた。 目と目が合った瞬間、まるで蛇に睨まれた蛙のように私はその瞳に囚われてしまった。
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