冤罪と賠償

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隣で言葉に詰まっている彼女とはうらはらに、夏の蝉は騒々しい。 いつまでもここにいる理由もないし、そろそろ涼しい場所に移動したい。 図書館にでも入り浸るか……そう思いつつ、立ち上がる。 「じゃ、そのお代、よろしくね」 軽く伸びて、後ろ手に手を振ったら、彼女は口をぽかんと開けて見上げてきた。 「?!払ってないの?!」 「うん」 「結局万引きじゃない!」 「ううん、君のおごり。君も食べたし。オレ冤罪だったし。傷付いたなぁ」 今度は顔が真っ赤になっていく。 熱中症で倒れないといいなぁ。 やっぱり言葉に詰まる彼女に振り替えって、手を丸めて胸の前に置く。 「早く払わないと、キツネ来ちゃうよ。ま、よ、な、か、に。コンコンってな」 ごちそうさん、と言って背を向けて別れたから、ソイツがそれから本当に払ったかどうかはしらない。 そもそも、ソイツが誰だかもわからない。 だけど、これからは学校が少しだけ、楽しみになった。 ーおしまいー
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