2人が本棚に入れています
本棚に追加
社の板にはコケがつき、見上げる枝には蝉が鳴く。
暑苦しいこと、この上ない。
べとつくシャツを摘まんで、服のなかに空気を入れてみるが、気持ち悪いだけだった。
陽炎が昇る参道に視線を落とすと、視界の端におかしな影を見つけた。
このクソ暑い中、面倒なことにお面を真っ正面に被った女子高生だ。
「あっ……あのっ、ぉ、ぉ代を、その……ぅ」
律儀に両手を猫みたいに丸めて、胸の前にちょこんと置いてポーズまで作っている。
「…………」
「お、お代……をっ、ち、ちちち……ちょうだぃ……」
あえてじっくり見てやると、余計に声が上擦ったようだ。
あの制服はうちのヤツか。
アイスキャンデーの棒を奥歯で噛んでいると、先が割れた。
木屑をプッと吐き出すと、変な女子高生は少し飛んだ。
……驚いたらしい。
「あ……あのー、そのアイスのお金、払ってませんよね……?万引きするとキツネがくるんですよ?」
ちょっと慣れてきたのか、変なポーズのままで喋りだした。
ああ、あちぃなぁ……。
最初のコメントを投稿しよう!