神社のキツネ

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社の板にはコケがつき、見上げる枝には蝉が鳴く。 暑苦しいこと、この上ない。 べとつくシャツを摘まんで、服のなかに空気を入れてみるが、気持ち悪いだけだった。 陽炎が昇る参道に視線を落とすと、視界の端におかしな影を見つけた。 このクソ暑い中、面倒なことにお面を真っ正面に被った女子高生だ。 「あっ……あのっ、ぉ、ぉ代を、その……ぅ」 律儀に両手を猫みたいに丸めて、胸の前にちょこんと置いてポーズまで作っている。 「…………」 「お、お代……をっ、ち、ちちち……ちょうだぃ……」 あえてじっくり見てやると、余計に声が上擦ったようだ。 あの制服はうちのヤツか。 アイスキャンデーの棒を奥歯で噛んでいると、先が割れた。 木屑をプッと吐き出すと、変な女子高生は少し飛んだ。 ……驚いたらしい。 「あ……あのー、そのアイスのお金、払ってませんよね……?万引きするとキツネがくるんですよ?」 ちょっと慣れてきたのか、変なポーズのままで喋りだした。 ああ、あちぃなぁ……。
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