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店のじいさんは相変わらず、画質の悪いブラウン管を呆けた顔で眺めていた。
時代を感じさせる古いクーラーから、アイスを取り出す。
キツネは……側を抜けて歩いてきたのだが、着いてこなかった。
コケと落ち葉で埋もれるような鳥居をくぐって、もといた場所に戻る。
残念かな、キツネは本当に残念なキツネだった。
全く同じ場所で、同じポーズで、立っていた。
俺はそいつの腕を掴む。
「は?え?」
間抜けな声を出す。
ちょっと強引だが、社の縁に座らせる。
その横にどっかり腰掛けると、改めて汗が出た。
あの距離を歩くだけで、体力が底をつきそうだ。
「お面被ったままで、卑怯だね」
面も見せないで……という思いを、視線に込めて投げると、ソイツは言葉につまったようだ。
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