Ⅰ.正反対な双子の距離

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「…それじゃあ、諏訪部くん。ゆっくりしていってね」 爽はその名の通り、爽やかな笑顔を向け、美少年の手を取って2階の自室へと姿を消した。 この後は…きっと2人でお楽しみだろう。 当てられたくなかったら、2階に行くのは当分控えた方がいいな。 ため息を吐き、俺は蓮に向き合ったのだが…何故か蓮は俺の顔を凝視していた。 「…なんだよ」 俺が無愛想に問うと、呆れたような息を吐かれる。 「お前ら双子の癖に全く似てないよな」 確かにその通りだ。 爽と俺は何もかもが正反対だった。 俺は…前述にもあるように、‘‘不良”というレッテルの貼られた男だ。 素行もお世辞には良いと言えないし、成績だってどちらかと言えば悪い。 学校では…いや、学校でも嫌われ者で正直、蓮やもう一人の友人・秋斗〈あきと〉がいなければ完全なるアウトローだっただろう。 その2人以外は俺の事を恐怖の対象や嫌悪の眼差しで見る事が多い。 (ま、俺は何もした覚えがないから何故 嫌われているのかは判らないが…) それに加え、不良と噂の彗にわざわざ歩み寄ろうとする人間はいない。 仕方のないこと、と諦める他なかった。 こんな俺に対し爽はと言うと…学校の人気者である。 整った顔に、さらりと揺れる天然の茶髪。 身長は俺には負けるものの、172センチと日本の男子高校生にしてはやや高めだ。 そして、皆を虜にする眩しい笑顔の持ち主であると同時に、成績優秀・運動神経も抜群と例えるなら漫画の主人公のようなスペックの高さときた。 それだけでも十分にモテる要素だが、それにプラス性格も良しと嫌味な程完璧だった。 自分を鼻にかける訳でもなく、周りに優しい、且つ生徒会書記という役職も仰せつかっている奴だ。 ここまでくると、妬む輩よりも慕う者が増えるもの。 先生達からの信頼も厚く、周囲からは学年関係なく「王子」として崇められている。 そのせいもあってか、双子の片割れである俺は余計に肩身が狭い。 ここまでで判るように、俺と爽は双子といえども正反対な存在だ。
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