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「何してんの?」
「あっ、お疲れ様です」
彼女が食べ終わるのを待っていると、巡回をしていた警察官が声をかけてきた。
一瞬ドキッとしたがよく見ると幼馴染の兄さんだった。小さな時から仲良くしてもらっている人で、正義感の強い人だとは思っていたが、まさかそのまま警察官になるとは思わなかった。
「ちょっと困ってまして」
「冬にアイスとはまた粋だね」
「ははは」
「一人でこんなに食べきれるの?」
「え?」
ちらりと彼女の方を見ると、静かに微笑んでいた。
「風邪ひかないようにな」
「はい」
「雪でこけないように気を付けろよ」
お兄さんはそう残して去って行った。まるで、彼女の事なんて見えなかったかのような態度。こんなにも雪が降っているのにも関わらず、冷や汗が流れた。
「どういうこと・・・・・・?」
「これたべよー」
彼女は僕の質問には答えず、ソフトクリームを手に取った。
「ねえ、君は一体何者なんだ?」
「あー、雪だるまにアイス食べさせてる!」
その無邪気な声に振り返ると、母親に手を引かれた男の子が僕たちを指差していた。
「すみません」
「いえいえ」
「雪だるま可愛いね!」
黒目の大きな瞳をキラキラと輝かせ、僕に語りかけてくる男の子。その声色に、僕をからかっている気配は一切なかった。
「えっ?」
「お兄ちゃんが作ったの?」
「うん?」
彼女は嬉しそうに男の子を見ていた。
「雪だるま・・・・・・」
「うん」
僕の呟きに、彼女は小さく答える。
これが彼女との出会いだった。
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