2105人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
『今度』は一度で終わらなかった。
解約を盾に二度、三度と要求され、四度目の後でわたしは言った。
「お世話になりましたし、こうするのは嫌じゃないですけど、やっぱり奥様に申し訳ない気がするので……今日までにさせてもらえませんか。他に出来ることがあれば、なんでもさせてもらいますから」
一瞬、彼の表情に影がよぎった気がした。けど
「そうだね。いいよ。俺も、そろそろバレても困るし」
と彼は笑顔で言った。
「あの、倉見さん、だよね?――さんに話聞いて、俺も保険に入りたいんだけど」
彼の後輩に声をかけられたのは、その翌週だった。
わたしは、売られた。
最初のコメントを投稿しよう!