【8】

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「……お客さん取られちゃったとか」 「いや、結婚しようと思ってた女」 「は?」  思わず振り返ろうとすると、彼はわたしの頬に手を置いて、前に向かせる。 「女って……」 「別にその話がしたいわけじゃねえ。何が言いたいかっつーと、あんたが何やったのか、何があったのかは知らねえし別に聞かねえけど、俺は多分あんたの気持ち分かるし、あんたの味方だ。……だから、ま、言いたいことありゃ吐き出しちまえ。ここで」  言いながら、大きな手は頭を撫でてくれる。  ……なんで、こんなに優しいんだろう。この人。 「……椿田さん。ほんとに付き合ってる人居ないんですか?」 「どうして」 「彼女居ないって言う割には、なんか余裕あるし」 「嘘じゃねえよ。『今は』居ないっていうのは」 「それ、普段はだいたい彼女居るってことですか」  答えず、彼は自由な方の手でいきなりわたしの胸をわしづかみにした。 「ひゃっ」 「愚痴吐くなら吐けばいいっつったけど、そういう話は受け付けてねえぞ。落ち着いたなら、さっさとやらせろ。爆弾娘」 「ば……」 「人がゴム着けてる時に、他の男に顔射された話とか。爆弾もいいとこだ。このバカ」
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