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「……お客さん取られちゃったとか」
「いや、結婚しようと思ってた女」
「は?」
思わず振り返ろうとすると、彼はわたしの頬に手を置いて、前に向かせる。
「女って……」
「別にその話がしたいわけじゃねえ。何が言いたいかっつーと、あんたが何やったのか、何があったのかは知らねえし別に聞かねえけど、俺は多分あんたの気持ち分かるし、あんたの味方だ。……だから、ま、言いたいことありゃ吐き出しちまえ。ここで」
言いながら、大きな手は頭を撫でてくれる。
……なんで、こんなに優しいんだろう。この人。
「……椿田さん。ほんとに付き合ってる人居ないんですか?」
「どうして」
「彼女居ないって言う割には、なんか余裕あるし」
「嘘じゃねえよ。『今は』居ないっていうのは」
「それ、普段はだいたい彼女居るってことですか」
答えず、彼は自由な方の手でいきなりわたしの胸をわしづかみにした。
「ひゃっ」
「愚痴吐くなら吐けばいいっつったけど、そういう話は受け付けてねえぞ。落ち着いたなら、さっさとやらせろ。爆弾娘」
「ば……」
「人がゴム着けてる時に、他の男に顔射された話とか。爆弾もいいとこだ。このバカ」
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