2112人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
その人は数秒ぽかんとわたしの顔を見つめて、煙草を唇から外す。
「……えーと、なんか新手のサギ?」
「違います」
わたしは、さっき受け取ったばかりの一回目の保険料、に自分のお金を加えて二万円を財布から取り出した。
「これで、一晩じゃなくてもいい。ホテルの休憩分くらいでもいいから、あたしに付き合ってもらえませんか」
また、強い風が通り抜けると煙草から灰が舞って、彼は携帯灰皿にそれを捨てる。
「――――オッケー。いいよ。俺ビョーキねぇし。……行先は、嬢ちゃんが決めな」
「……ありがとうございます」
その人は新しい煙草を取り出して火を点ける。
「あと、途中でコンビニかどっか寄っていいか」
「はい?……どうぞ」
「ラブホにあるのだと、キツくてな。ゴム」
「はぁ」
「言ってる意味分かる?」
「……あんまり、どうでもいいです」
最初のコメントを投稿しよう!