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 その人は数秒ぽかんとわたしの顔を見つめて、煙草を唇から外す。 「……えーと、なんか新手のサギ?」 「違います」  わたしは、さっき受け取ったばかりの一回目の保険料、に自分のお金を加えて二万円を財布から取り出した。 「これで、一晩じゃなくてもいい。ホテルの休憩分くらいでもいいから、あたしに付き合ってもらえませんか」  また、強い風が通り抜けると煙草から灰が舞って、彼は携帯灰皿にそれを捨てる。 「――――オッケー。いいよ。俺ビョーキねぇし。……行先は、嬢ちゃんが決めな」 「……ありがとうございます」  その人は新しい煙草を取り出して火を点ける。 「あと、途中でコンビニかどっか寄っていいか」 「はい?……どうぞ」 「ラブホにあるのだと、キツくてな。ゴム」 「はぁ」 「言ってる意味分かる?」 「……あんまり、どうでもいいです」  
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