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「理由はメールで伝えたじゃないですか」
「……自分で頑張るのは結構だが、ひとことくらい連絡よこしやがれ。こちとらあくまであの切れっ端とあんたの話からの推測でしか事情知らねえんだ。また変な男に、とか心配にもなるだろ。ちなみに『それ』無かったら会うなりゲンコツくれてやったところだ」
ゲンコツも下着もどっちも嫌だけど。
「……すいませんでした」
ふーっ、と彼は煙を吐いて、言う。
「ま、分かってたけどな。あんたなら、気づいたその日に連絡来るか、でなきゃ自分で納得してからか、ずっと来ないか。はっきりしてンだろうとは思ってたけど」
あの時と同じ川のふち。彼は水面に目を向ける。
「……良かったな。今じゃなくて」
意味が分からずにいると、彼は言った。
「今ここに、あれ破り捨てるのは無粋だからな」
暗さに街のネオンを映していた川面は、今はそうじゃない。
たくさんの、桜の花びらが水面を埋めて、ぶつかり合いながら静かに流れている。
こう見ていると、悪いことをしたと思う。遣り場のない感情をここに捨てて、みんなに迷惑をかけて。
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