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どかっと彼がベッドに腰を下ろすと、背中側のスプリングが軋む。
「ていうか、その『嬢ちゃん』ってやめてくれます」
「じゃー、名前は?下の名前でいい」
「……すずこ」
「鳴る鈴か?」
「涼しいの方。りょうこに間違われるけど」
「そうか。じゃ、すずちゃんだな。……涼ちゃん、いくつだ」
「そういうのもいいです」
「おじさんはそういうの嫌なんだよな。……いや、風俗行ってそんな身の上話聞くのはヤボだけど、これ、風俗じゃねぇし。なんつーか、どうせするならちゃんと名前あって年数生きてきた、生身のあんた抱きてぇからな」
その言葉は、それまでのふざけた調子じゃなかった。
「22」
「ぅわ。……ほぼ半分かよ。予想してたけど」
「そっちは?」
「41、ってさっき言ったろ」
「名前」
「あー……下は好きじゃねえからいいわ。椿田」
「……椿って、あの花の?」
布団から、目から上だけ出したわたしに彼は振り返って言った。
「他に何がある。唾吐く方の唾なワケねぇだろ」
「分かるけど一応言っただけじゃないですか……」
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