【3】

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 背中を向けたままの彼に、わたしは言った。 「下の名前、嫌いなんですか?」 「嫌なんだよ。変な、坊さんみたいで。女にも、呼びにくいとか言われて……」  言いかけて、彼は黙ってしまった。 「あの、別に言いたくなかったらいいですから……椿田さん?」  突然彼は振り返って、無言でベッドに入ってきた。  そのまま背中から抱きしめられ、素肌が触れて胸がどきりと鳴った。 「ちょ……あの、覚悟はしてますけど、いきなりは」 「るせぇ。こちとら古傷思い出してトラウマ状態なんだ。ちょっと落ち着かせろ」 「ひゃ」  ぎゅっと彼はわたしの肩のあたりを抱きしめる。  けど、胸とか変なところには触れないように気を遣ってくれている、のは分かる。 「トラウマって……」 「黙れ」  しん、と部屋は静まり返って、冷蔵庫か何かのブーンという音しかしなくて。  一人だった布団の中にこの人が入って、二人分の体温が満ちて、温かくなる。  後ろになんか当たってる感触はあるけど、それ以外はすごく落ち着く、気がした。  
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