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「倉見さん。この金額で奥さんの方もOK出たから、お願いするよ」 「……ありがとうございます!」 「もうすぐ更新で保険料結構上がるし、どうしようと思ってたから、って。……ただ」  彼の職場の昼休み。デスクの上には奥さんの手作り弁当を開いたままだ。  彼は、妙な間を置いてわたしを見上げた。 「ウチの子、もうすぐ誕生日でさ」 「……はい」 「他でも同じくらいの金額で提示されてて、決めてくれたら図書カードでもクオカードでも好きなものくれるって言うんだよね。プレゼントがわりにって。遊園地のパスポートでもいいって。どこも厳しいんだね」  ベテランの人は、そういうプレゼント攻勢をするとは聞いていた。でも新卒で、お給料も美容院代やスーツ代、すぐ傷む靴代に消えるわたしには、大した金額は出せない。  身の回りにまずお金を遣え、と先輩たちから口酸っぱく言われていたから。 『若いんだから、見かけでまずオトさなきゃ。中身が無い分』 「倉見さんに、それをしろって言ってるんじゃないよ。……だって、ほら、他社のおばさんには出来なくて、倉見さんなら出来ることも、あるでしょ?」
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