【8】

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【8】

 同い年の新卒の男の子だった。  それまでは話しかけてもろくに目も合わせてくれなかったのが、急に向こうから声をかけられた。 「他の会社の営業員さんにも勧誘されてるんだけど、年の近い人の方が話しやすいと思って」  同じように、居酒屋からホテル。  ただ、こっちの方が慣れてない分、誘い方はぎこちなかった。 「あの、俺……今彼女居なくってさ、……女の子と喋る機会とかあんまり無くて、せっかくだから二人きりで話せないかな?」  わたしは、冷めていた。  もう、この人が、あの既婚者にけしかけられてこんなことをしてるというのはバレバレだったし、それなのにまだそんな上っ面のことを言って誤魔化せると思っているのが、バカバカしくてしょうがなかった。  いっそ、『俺もやらせて欲しいんだけど』と正直に言えばいいのにと思った。  もうそこに行って何をすればいいかは分かって居たから、何とも思わなかったけど。    でも。 「――――椿田さん」 「なんだ」 「普通、男の人ってどこに出すんですか」
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