【9】

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【9】

「やっぱりバカって思ってるんじゃないですか……」  がっくり落ち込むわたしに彼は言う。 「あー……言ったが、『バカな子ほど可愛い』って言うだろ。女も同じだ」  すごく、言いくるめられてる感。 「俺くらいの年になると、会う女どいつもこいつもテメェの人生のことしか考えてねえ。引くわ。正直。……お前みたいな方がいい」  胸に置かれたままの手が軽く膨らみを包んだだけで、そこは敏感に反応して、つんと硬くなる。手のひらが擦れるだけで、勝手に感じてしまう。  わたしの吐息を確かめたみたいに、彼は首筋に唇を触れる。 「んっ。……でも」 「なんだ」 「……結婚したいのは当たり前だと思います。女の人が」 「結婚っていうか……アレは、男を人生の道具にしか考えてねぇんだよ」 「そういうものですか」 「そういうもんだ」  首の付け根から肩に流れるあたりに、彼は軽く歯を立てる。体がびくりとふるえる。 「や、それ……」 「本当に嫌なら、嫌そうな声で言うんだな」 「あ……」  触れられるたび、思う。他の誰じゃなく、わたしのどこをどうしたら感じるか、この人はもうわたし以上に知っているんだ。  胸の先を撫でられて、びくっと体がまた跳ねる。彼は身動きできないくらい、強くわたしを抱きすくめて言う。 「大人しくしろ。……最後まで頭ん中で余計なこと考えてンじゃ、面白くねぇだろ。ちょっと真っ白になれ」  
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