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【2】
人って、どんな時も、初めての場所に行くのが不安なのは当たり前なんだけど、こんな時も来たことのあるラブホについ、足が向かったのは自分でもおかしかった。
いい思い出があるわけでもないのに。
部屋を選ぶやつ。わたしが手を出す前に彼が選んだ。
空いてる中で一番高い部屋。
「おじさん、買われた側だから、俺が選んでいいよな?」
良く分からない理屈だけど。先払いで私がお金を払って、部屋に行った。
「やっぱ、広いねぇ。いい部屋は。煙草吸っていいか」
ソファにどっかと座って、いいと言う前に煙草の箱を取り出す彼にわたしは言った。
「どうぞ。あたしお風呂行って来ますから」
「ごゆっくり」
脱衣所で服を脱ぐ段階になって、ふと怖さが来た。
――――でも、あのおじさんなら、命まで取られることは無さそう。
と楽観的な考えを頭に浮かべながら裸になって、シャワーを済ませる。
けれど、不安感は収まらず、いつのまにか『大丈夫。大丈夫』と頭の中で唱えている。
浴室から出ようとドアを開けると、そこにワイシャツ姿の彼が居てわたしは声を上げた。
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