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【3】
初めて、ここに来た時は、情けないくらい何も知らなくて、あの人の言うなりだった。
ラブホも、セックスも、そういうものだと思った。
そういうもの、っていうのは、中高大学とずっと男性に縁がなくて、友達の話を聞きかじるばかりで何も知らないわたしでも、淡い憧れを抱くような、甘くて恥ずかしくて、くすぐったい世界、とは違っていたということだ。
がっかりするような、希望も、どきどきもない、ごく即物的な行為と場所。
そんなもんか、という軽い失望感が天井を見ているとリアルによみがえって、わたしは布団の中に身を埋めた。
ガチャ、とドアが開く音と
「っしゃ、やるか」
と、身も蓋もない声が同時に聞こえた。
布団から顔を出すと、彼は濡れた頭にタオルをかぶって下は。
「なんだ。初めて見るわけでもねぇだろ。今までの男よりデカいか」
わたしはまた布団にもぐった。
「そんなネタはいいです。ていうか、普通タオルって下隠すもんじゃないですか」
「そりゃ自信ないヤツのすることだな」
「マナーだと思いますけど」
「俺を選んだのは、嬢ちゃんだろ」
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