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記念アルバム
親の意向で、誕生日には必ず、改まった格好で写真を撮るようにしている。
生まれたその日から去年の誕生日まで、その枚数は十九枚。今年はついに成人祝いの二十枚目ということで、一度通して見てみようということになった。
生まれたてから今の年まで、小さなアルバムに一枚ずつ飾られた俺の写真。
さすがに生後すぐの写真は違うが、一歳からすでにめかし込んでいて、一度に見ると滑稽だ。
でも、『それ』に気づいた瞬間、家族全員の顔から笑みが消えた。
生まれたばかりの俺の足先に、小さな黒い染みが窺える。
それだけなら、写真の汚れか、当時の俺の足に汚れが付着していたと思うだけだ。でも、どの写真を見ても同じ大きさの染みがひっそりと映っていて、しかもそれは、少しずつ頭の方に移動してきているのだ。
気のせいだと放置するには不自然すぎて、話し合いの結果、今年は写真を撮るのをやめようということになった。
今までずっと続けてきた慣習だし、今年は成人の記念だから、かなり残念な気分になったが、何か起きてからでは遅いので、今後は記念写真を撮ることを諦めるべきだろう。
そういう話で落ち着いたのだが、二十歳はやはり記念だからと、誕生日に普段着で何枚か写真を撮った。
現像したその写真には、あの黒い染みは映っていなかった。
気のせいだったのか。それとも、改まった格好でなければ大丈夫なのか。
ともかくその写真が何ともなかったので気が緩み、成人式の際、式に参加した友人達と写真を撮った。
その時の写真は友人が撮影したものだったので、後日、俺に焼き増しが渡された。
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