夏なんて

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僕たちは今の時期、眠っている。とはいっても、眠っているというのは言葉の綾ってもんで、会話をしたりする。 それに、定期的に水だって飲む。勿論、栄養も補給する。 「楽しみだね!」 僕が右隣のお隣さんにそう言うと、お隣さんは僕に笑顔を返してくれる。左隣のお隣さんに同じことをいうと、ちょっと気むずかしそうな顔をした。 ああいうのは、時期になってもあんまり注目されない。やっぱり、注目されるには元気と好奇心が必要だ。 僕たちは今の時期、視界は遮断される。それでも苦じゃない。なんせ僕たちには明るすぎるくらいの未来が待っているから。 待ち焦がれる。毎年僕に会いに来てくれる、厚手のマフラーをぐるぐる巻きにして、毛糸の手袋を着けたあの娘。かわいい、かわいい、あの娘。 きっと今年も僕を見て、あの娘は笑顔になってくれるのかもしれない。そう思うと、なにも見えなくたって希望と歓喜が僕のなかに溢れる。 早く会いたい。今年はどんな笑顔を見せてくれるのかな。 そんな焦燥感にも似た好奇心が僕を満たす。 だから、夏がないと僕たちは成長することが出来ないけれど、僕は時々こう思うんだ。 夏なんて、なくればいいのに―― ――僕の名前は、ペチュニア。 「夏なんてなくればいいのに。」終わり
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