私は旅に出た

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ほころびが目立つ 帆布のリュックを背負い 日本中を働きながら 旅をしている。 時はすでに 昭和42年。 数年前に五輪があって 驚くほど東京は成長した。 日本全体が瞬きの間に 変わっているようだ。 第二次世界大戦が終わり、 復員して20年がたった。 日本は負けた。 昭和20年。 私が戦地へ赴いたのは 終戦の1年前だった。 国民の心には すでに「負ける」 そうわかっている空気があった。 それでも 何とか「お国のため」 と言う言葉にすがるように 私の町からも 何人も送り出されて行った。 私に呼び出しが来たのは 昭和19年の2月。 知った顔が 無言で帰って来ていた頃だった。 寒さも厳しく、 配給も減っていっていた。
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