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猛はサイドブレーキをかけ、車外へ出ていく。ユキも続く。
ここは念写の予知どおり、二人で倒木をどけるしかない。村へ行くには、どうしても、この道を通るしかないのだから。
けんめいに力をあわせた。
時間はかかったが、どうにか、道のわきにどかすことができた。
車内に戻り、ずぶぬれになった体をタオルでふく。
「時間くったなあ。今、何時?」
猛が言うので、腕時計を見る。
「二時半」
「腹へったなあ」
え? こんなときにーーと思ったが、
「あ、そうだ。おにぎりとか買ってある。ずっと車内に放置してたから、いたんでなきゃいいけど」
食糧は無事だった。木陰に停めてたから、車内の温度が上がらなかったようだ。
コンビニのおむすびやパンを二人で食べる。自分で思ってたより空腹だった。思わず、がっつく。
「おいしい。疲れがとれる」
「だろ?」
ずっと、この人といっしょにいたい。切実に、そう思う。
「じゃあ、行こうか」
「そうね。何も起こってないといいけど」
ところが『何か』は起きていた。
村について、すぐ異変に気づいた。
いやに村じゅう、さわがしい。懐中電灯の光が、あっちこっちに、かたまりになって、闇をうごめいてる。
「いったい、何があったの?」
「わからない。でも、用心したほうが、よさそうだ」
ふたたび、材木置き場に車を停めた。
ユキは猛と二人、村へ続く道を歩きだした。
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