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子どもが犠牲になって、村人の怒りが爆発したのだ。
そっと、その家を離れた。
坂道をのぼっていく。
途中で折れて、リヒトの家に向かう細道に入る。雑草だらけの、でこぼこの土の道。豪雨のせいで、ぬかるんでる。いよいよ歩きにくい。
「気をつけて。ころばないように」
猛が手をにぎってくる。
さりげない優しさが嬉しい。
しかし、そのあたたかい心地は一瞬だった。
雷鳴がひびき、夜道をてらした。
前方に人影が見えた。村人だろうか。
それにしても、いやに全身が青白く見えた。稲光に照らされたせいだろうか?
「どうしよう」
「相手は一人だ。おれが、なんとかする」
そう言って、猛は懐中電灯をつけた。
やはり、人影がある。道端に立ちつくしてる。近づいていくと、それは玲一だった。ただ、なんとなく、いつもの玲一と違う。
「戸神くん。さがしてたのよ。無事だったのね」
声をかける。
すると、玲一は、まっすぐユキを見た。
涼しげな、きれいな目。思ったとおり、とても端正だ。
そこで、ユキは気づいた。
(サングラスしてない。それに、包帯も)
素顔を見るのは、再会してから初めてだ。
「ケガしてるわけじゃなかったのね?」
「ケガ? ケガなんてしてないよ」
「ずっと包帯してたから、ケガしてるのかと思ってた」
玲一は笑った。くくくくっと、あのイヤな笑いかた。かわいそうな人だが、この笑いかただけは好きになれない。
「村の人たちが、あなたのこと、捕まえようと探してる。それで逃げてきたの?」
「へえ。村人がねえ」
変だ。玲一のようすが、おかしい。
ユキは近づいて、玲一の顔をのぞきこもうとした。
その瞬間、猛がユキの手をひいた。
「危ない!」
「え?」
おどろいて、ふりかえる。
何かが、ユキの頭上をかすめた。
猛がユキをひきよせる。そうでなければ、ユキは殺されていたかもしれない。
玲一がユキの頭上をとびこえていった。まるで獣のような速さで闇のなかに消え去る。
「……なに? 今の」
「戸神は、すでに犬神に憑依されていた。あるいは……」
玲一が犬神に?
その可能性はないわけではない。本人は否定してるが、あの肝試しの夜、玲一が塚にふれていれば……。
「でも、それなら、もう誰も犬神を封じられないじゃない」
「それどころか、村であばれてる犬神が二体になった」
たしかに、危険が二倍だ。
「どうするの?」
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