四章 呪われた村

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でも、それも、すべて終わったのだ。 リンカは死んだ。もう、この世にはいない。 あるいは自分は、それを確認したいのかもしれない。 運ばれてきた遺体は、『メシも食えなくなる』という状態らしい。 崇拝にも近いほど、あこがれてきた人の、その姿を見れば、自分はリンカから解放されるのではないかと。 かなうはずのない思いに終生、しばられるのは、ごめんだ。もう自由になりたい。 ヨウタだって気づいていた。 リンカは見ためはバツグンだけど、性格には問題があったことを。 だから、すっぱりとリンカのことは忘れてしまう。そこそこ可愛くて、優しい女の子を次は好きになる。 そのために必要な儀式なのだ。 ヨウタは白布のかけられた台の前に立った。布に手をかける。思いきって、めくった。 わッと悲鳴があがるのを抑えられなかった。 ヒドイなんてもんじゃない。 すさまじい死体だ。原型なんて、とどめてない。 解剖なんてする必要もないほど、コマ切れだったろう。縫合された今でも、かなりの部分が欠損してる。 (リンカ。おまえ、いったい、どんな死にかたしたんだよ……) そう思うと、涙があふれた。 「リンカ……リンカ……」 なんで、おまえが、こんなめに……。 ヨウタは死体のかたわらで、泣き続けた。泣きながら、白布をかけなおす。 もう充分だ。これ以上、見ていられない。 リンカは、この姿を誰にも見られたくなかっただろうし。 すると、そのとき、 「泣いてくれるの? わたしのために」 耳元で声がした。 ヨウタは、とびあがるほど、おどろいた。まわりを見まわす。もちろん、誰もいない。 空耳か? わからない。が、このまま、ここにいてはいけない。はっきり、そう感じる。 立ち去ろうとするが、体が動かない。金縛りにかかったヨウタの腕を、何かが、つかんだ。 たぶん、悲鳴をあげたと思う。だが、自分のしてることが、自分でも、よくわからない。 「あなたも来てよ。一人じゃ、さびしい」 ヨウタは見た。 自分の手をつかんでるものを。 それは、白布の下から伸びていた。 縫合跡だらけの、リンカの手……。 リンカにつかまれたところから、いっせいに数十の噛みあとが現れた。 「わああああッーー!」 ヨウタの体は、そのまま、白布の下に、ひきずりこまれたーー
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