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入浴後、ユキは玲一を待つうちに、うたたねしていた。
浅い眠りのなかに、見知らぬ風景が見えた。いや、知らないわけでもない。もしかしたら、このF村かもしれない。町並みが違うから、最初は気づかなかった。
なにしろ、どの家も、かやぶきだ。車や電柱が一つも見あたらない。道は細く、アスファルト舗装されてない土の道だ。
昔話の風景のなかを男女が歩いていた。時代劇みたいな格好をしてる。着物に風呂敷包みを背負い、笠をかぶった旅姿。
男は腰に刀をさげた武士だ。
女はその妻か妹だろうか。とても、美しい。
なんとなく、わけありのようすだ。駆け落ちか、仇討ちか。ふつうの旅人のようではない。
画面は紙芝居のように切りかわる。静止画まじりの動画の感じ。いくつかのシーンが、次々に現れる。
村の庄屋らしき金持ちの家に、男女は招かれた。だが、美しい娘を見る庄屋の目つきが不穏だ。
かぶさるように、血まみれの武士の映像。
むりやり庄屋の愛人にされる娘。
そのあとは切りかわるのが速すぎて、映像の意味を理解してるヒマがない。
黒い犬のようなものや、何かに祈る娘の姿が、一瞬、浮かんでは消える。
そして、溶暗。
暗闇のなか、何かが、うずくまっている。
白く光をてりかえす双眸で、こっちを見つめてる。
そこで、ハッと目がさめた。
誰かが枕元に、すわってる。
ユキは悲鳴をあげた。その人が、ユキの口を手でふさぐ。
よく見ると、玲一だ。しッと人さし指で、静かにするようゼスチャーする。
夢の続きかと思ったが、勘違いだったようだ。
ユキは、うなずいた。玲一が手を離す。
「話をするって約束したろ?」
「ごめん。布団に入ったら、寝てた」
ユキは、となりで寝ているハルナを起こす。あいだのフスマをひらくと、アユムはユキたちの気配で起きてきていた。
ユキたちの部屋に三人がならぶ。
すると、いきなり、玲一はタタミに両手をついた。
「どうか、助けてほしい」
ユキたちは顔を見あわせる。
そんなこと言われたって、助けてほしいのは、こっちだ。
「わたしたちに何ができるの? 呪われてるのは、わたしたちなのに」
「この村にいたら、呪われてなくたって殺される」
いよいよ物騒なことを言う。
「どういうこと?」
「この村は、アレに取り憑かれてる」
「アレって?」
夢に出てきた、アイツだろうか?
でも、それは玲一ではなかったのか。
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