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「ほんとのことを教えて。わたしたちを呪ったのは、戸神くんじゃないの?」
玲一は、ためらっている。
「言ってくれないと、わからないよ」
「もちろん話す。どこから話すか、考えてたんだよ。わかった。始まりから話そう。長くなるけど」
そう言って、玲一は顔をあげた。
「今から約二百年前。この村に、ある夫婦がやってきた。若い侍と美しい妻だったそうだ。侍は伊尾崎宗右衛門。妻は信乃と名乗ったそうだ。
でも、本名じゃないかもしれない。二人は事情があって逃亡してるみたいだった。駆け落ちか、敵討ちか、そんなことで人目を忍んでいた」
ユキは、ハッとした。
それは、まさに、さっき見た夢の内容だ。
アユムとハルナも息をのむ。二人も、あの夢を見たのだ。
「それ、さっき、夢で見た。奥さんに横恋慕した庄屋が、侍を殺すんでしょ? 奥さんは愛人にされた」
あっさり、玲一は肯定する。
「君たちも、だいぶ夢の干渉が進んでるんだな。それなら話が早い。じゃあ、その続きから話そう。
まんまと信乃を妾にした庄屋だが、それからだ。この村で恐ろしいことが起こるようになったのは。伊尾崎夫婦は、犬神を信仰してたんだ」
「犬神……そういうの、地方では、まだ残ってるらしいね。ニホンオオカミを信仰するんだっけ?」
ユキが言うと、アユムが首をふった。寺の息子だから、そういうことには詳しい。
「それは狼信仰だろ。狼信仰は、たしか東北とか関東に多いんだ。犬神は、どっちかっていうと西日本だよ。それに、犬って言っても、実物の犬じゃないんだよな」
よくわからなかったので、すかさずネットで検索する。ずらりと並ぶ項目を、ざっと見る。
わかったのは、犬というより狐。陰陽師の使う管狐に近いものだということ。人に憑依して妖しい言動をさせたり、呪術に用いられる。
「なんか思ってたのと違う。ちょっと怖いなあ」
「昔のことだから、精神に異常をきたしてる人を、狐が憑いたとか言ってたんだろ」と、アユム。
「大部分は、そうなんだろうけど。でも、それだけでは説明できない例まあるんだって。本人が知るはずないことを知ってたり。
憑きやすい家系とかあって、その力で占いや呪術で生計を立ててたって書いてある。
そうなると、もう霊媒師だよね。起源は陰陽師じゃないか、だって」
スマホをのぞきこんでたユキは、ふと気づいた。
その現象、もしかして……。
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