四章 呪われた村

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時刻は十時すぎ。意外にも、それほど遅くない。うたたねしたりして、もう真夜中のような気がしていた。 ユキはスマホをとって、矢沼に電話をかけてみた。 なかなか出ない。もう寝てしまったのか? それにしても、大事な用件を任したのに、なんの報告もない。さすがに変だ。何かあったのかもしれない。 しつこくコールしてると、やっと、つながった。いきなり、泣き声が聞こえてくる。 「ちょっと? なんなの? 矢沼くん?」 「……ユキさん。僕、もう、やですからね。この件から、おりますんで。会社にも辞表、書きました」 「はい? なんで急に」 こっちは大変だっていうのに、何を甘ったれてるのか、と思ったら。 「マスさん。死にました」 不意打ちで深刻な内容が告げられる。 「死んだ……?」 「殺されたんだ。アイツに。だから、もう、やなんですよぉ」 「ちょっと待って。だって、桝前田さんは呪いとは、なんの関係もないしーー」 しかし、矢沼は、もうユキの言葉を聞いてない。 「例のものはS駅のコインロッカーに入れときました。カギは黒猫キッチンに預けときました。じゃあ、さよなら。ユキさん、ごめんなさい!」 「えっ、ちょっと、待ってよーー」 電話は一方的に切られた。 ユキはスマホをにぎりしめたまま、みんなに説明する。 「よくわからないけど、桝前田さんが亡くなったらしい。蜂巣さんから、預かりものをしてた人。アイツに殺されたって」 ハルナが、また泣きだす。 「なんで、みんな殺されるの? その人は呪われるようなことしてないでしょ?」 考えながら、玲一が言う。 「犬神を封じる剣を持ってたからだ。アイツだって、封じられたくはないだろ」 ユキは、あわてた。 「じゃあ、ロッカーのカギを預かってる黒岩さんも危ないじゃない。そんなことに巻きこめない。 それに、もしものことがあって、カギが警察に渡ったら、剣が没収されちゃう。すぐに、とりに行かないと」 「おまえ、一人で行く気か?」と、アユム。 「あんたが運転してくれる気あれば、二人だけど?」 アユムは一瞬、言葉につまった。が、 「わかったよ。このさい、なんでもやるよ」 玲一が頭をさげる。 「そうしてくれると、ありがたい。うちの車を出したら、村人が大騒ぎするだろうからね。おれが村をすてて逃げだしたと思って」 それを聞いて、ユキは疑問に思った。
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