四章 呪われた村

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「ありがとう。ところで、さっきから物陰で、こっちを見てるのは、君の友達?」 ため息をついて、アユムが出てくる。 「べつに隠れてたんじゃない。出てくるタイミングがなかっただけだ」 いや、違うだろう。もちろん、隠れてたのだ。タイミングを見て、もしも、やれそうなら、リヒトを殺すーーか、少なくとも殴って気絶させるつもりだったはず。 「ユキさんの友達って、こんな感じばっかりだね」と、リヒトが、くすくす笑う。 ユキは、なんでか恥ずかしくなった。 「そうじゃないんだけど……なんか、ちょっと、いろいろ、ごめん。こいつ、川瀬アユム。おぼえてない? 肝試し、いっしょに行った」 「ああ。なるほど。了解。じゃあ、出発しようか」 アユムは無言で運転席に乗りこんだ。 迷ったが、ユキは助手席にすわる。 必然的に、リヒトは後部座席だ。 もしも、リヒトが犬神なら、いきなり背後から、おそわれる可能性があるのだが。 車が走りだすと、リヒトが切りだした。 「ところで、ユキさん。戸神邸にいたろ? 新しくわかったことない?」 あるよ。あなたが犬神だとわかったーーとは言えないので、 「戸神くん……イトコの戸神玲一くん。行方不明じゃなかったよ。病気で入院してたんだって。ちゃんと家に戻ってた」 「あの包帯にサングラスの?」 「そういえば、見てたよね? 神社で、リンカが殺されたとき」 「まあね」 「なんで、あんなとこにいたの?」 「戸神邸を見張ってたからさ」 「なんのために?」 「だって、呪いの中心だろ?」 「そうだけど……なら、どうして、戸神くんに会おうとしないの? 戸神邸の前で、急にいなくなったよね?」 リヒトは答えない。 ふりかえると、口元に手をあてて考えている。 「リヒトくん?」 「まあ、いろいろ理由はあるけどね。ところで、同級生に、高山チサトさんっていたろ? おぼえてるかな?」 高山……なぜだろう? つい最近、誰かから、その名を聞いた気がする。 「スポーツが得意だった子だよね。とくに親しかったわけじゃないから、よくおぼえてないけど」 言いながら、必死で記憶をかきまわす。が、思いだせない。いつ、誰から聞いたのか。ほんとに、つい最近だったはずなのに。 「高山さんが、どうかしたの?」 「このへんに旅行に来てたらしいんだ。友達といっしょに。ユキさん、知らないかと思って」 「知らない。中学卒業してから会ったことないよ」
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